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衆議院で審議中の国家情報会議設置法案=国家情報局設置法案をはじめとする
スパイ防止関連法制の制定に反対する市民団体共同声明
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| 2026年4月14日 |
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1、スパイ防止法案の制定は三段階で進められようとしている。
2025年10月20日に自民党と日本維新の会が作成した「連立政権合意書」には、スパイ防止関連法制として、次のような立法をつくることが合意されている。
まず今国会に、第1弾として国家情報局法案が提案され、衆議院の内閣委員会で審議が始まっている。17日には参考人の意見聴取が行われる見通しであり、審議終局も近い情勢である。国家情報局法案は、内閣総理大臣をトップとし、各省大臣をメンバーとする国家情報会議を立ち上げて、その事務局を内閣情調査室を格上げした内閣情報調査局が担うとする法案である。イギリスのMI5にあたる機関を作ろうとするものであり、スパイ防止法案の第1弾である。
次に第2弾として、今秋には、外国通報目的の秘密漏洩を死刑、無期拘禁などの厳罰に処す法案と外国代理人規制法案ないしは外国勢力活動透明化法案という名の、日本市民が外国の人々と政治活動だけでなく、経済、文化活動を協働する行為にスパイ予備軍との疑いの目をもって、国家情報局への広範な登録を義務付ける法案が提案される可能性がある。このような制度は、アメリカ、イギリス、ロシア、フランスなど世界各国で制定されている。ただし、ドイツは未制定である。ロシアの法案は、政府の見解と異なる見解を公表するNGO活動を封殺するものとしてヨーロッパ人権裁判所から表現の自由などを侵害するものとの判決を受けている。米・英・仏の制度についても、強い弊害があり、野党や多くのNGOはこの制度に反対している。
そして、来年の通常国会には、第3弾として、対外情報庁法案が提案される。対外情報庁は、アメリカのCIA、イギリスのMI6にあたる機関であり、日本製のスパイを養成し、彼らを世界各国に派遣して、スパイ活動をさせようという計画である。諜報のため、日本のスパイに仮装身分を認める制度(マイナンバーを2つ持つということ)なども提案される見通しである。
2、日本はスパイ天国ではない
政府は、G7の中で情報局を持たないのは日本だけであり、日本は情報局がないためにスパイ天国となっており、これを改善するために国家情報局の設立が求められているという。それでは、現状の情報機関においてとらえることのできないスパイ事例としてどのようなものがあるのかという、立法事実を明らかにするべきだ。
山本太郎議員の質問主意書に対する石破茂内閣総理大臣(当時)の答弁書(内閣参質218第8号(令和7年8月15日閣議決定))によれば、「政府としては、外国情報機関により我が国に対する情報収集活動が行われているとの認識の下、カウンターインテリジェンスに関する機能の強化は重要と認識しており、情報収集・分析体制の充実強化、違法行為の取締りの徹底等に取り組んでいるところである。そのため、御指摘のように「各国の諜報活動が非常にしやすいスパイ天国であり、スパイ活動は事実上野放しで抑止力が全くない国家である」とは考えていない。」と答弁していた。さらに、防衛省が2025年1月に特定秘密漏えい事案等に係る再発防止策に関する有識者会議(第1回会議)に提出した資料に、「防衛省におけるこれまでの情報保全事案」が紹介されているが、外国のスパイ活動による情報漏えい事案は一つも取り上げられていない。このような状況のもとで、国家情報局を設立することに、どのような必要性があるのか政府は明らかにできていない。
そもそも、国家情報局と対外情報庁は、戦争に勝つための情報戦のための機関であり、憲法九条によって国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄した日本には、そもそも必要がなく、だからこそ戦後80年にわたって、日本では情報局は設置されなかったのである。
3、法案審議で明らかになってきた問題点
衆議院の本会議と内閣委員会における審議は始まったばかりであるが、すでに法案のはらむ問題点が明らかになっている。国家情報局には、外国のスパイ活動への対処を「総合調整」する権限が付与される。つまり、市民の中から、スパイ活動を行っている者がいないかを見分けるための情報収集を行う権限が与えられたのである。
まず、最も基本的な問題として、国家情報局が、どのような権限に基づいて、どのような情報を集めようとしているのかが、説明されていない(本会議における後藤祐一議員の質問)。
能動的サイバー防御法中のネット監視法案は、サイバー攻撃防止のために広範な通信情報を取得できることを定めた法である。政府は、同意なくして収集対象となるのは海外通信に限られ、国内で完結する通信は対象としていないと説明していた。しかし、基幹インフラ事業者や一般の通信事業者との協定に基づく通信情報の取得には、何の限定もない。また、法案の定義による国内通信はわずか6.8パーセントであることが、石川大我議員の質問に対する答弁で明らかにされた(2025年5月15日参院内閣委員会)。国内の当事者間の通信も、そのほとんどが海外のサーバーを経由するので、政府の説明では、海外のサーバーを経由した情報は、国内通信と定義されず、収集の対象とされるためである。これらのサイバー攻撃の防止のためとして収集された情報について、国家情報局は利用するのか、利用するとしてその手続が明らかにされていない。
4月10日の衆院内閣委員会で、中道改革の長妻昭議員が、同法の制定によってどのような懸念があるかを質問したが、政府は、答えをはぐらかし、誠実に答えなかった。同法の制定による懸念はプライバシー権と表現の自由の侵害であることは自明であり、提案者が、このような認識を持ち合わせていないことに驚く。
4、情報機関の活動は市民のプライバシーの権利と表現の自由を侵害してきた
日本には、主要な情報機関として、内閣官房内閣情報調査室、防衛省情報本部、警備公安警察、公安調査庁、自衛隊情報保全隊、内閣府土地規制法事務局などが存在している。そして、内閣情報会議では、これらの情報機関によって得られた情報を集約し、内閣の立場で、総合的な評価・分析を行っているとされてきた。
今回新たに設置されようとしている国家情報局はこれらの情報機関の司令塔として、スパイについての調査を行うとされるが、スパイ以外の広範な市民の活動を調査しなければ目的は達成できない。調査の過程で市民のプライバシー権(憲法13条)、思想・良心の自由(憲法19条)、表現の自由・知る権利(憲法21条)などが侵害されるおそれがある。現に、情報機関による行き過ぎた監視活動がプライバシーを侵害したとされる事案もある
名古屋高裁令和6年9月13日判決は、公安警察による市民団体に対する調査をプライバシー侵害として損害賠償を命じている。岐阜県警は、自らの提案により開催された風力発電事業者との会合の中で、反対運動について、「「大々的な市民運動へと展開すると御社(シーテック社)の事業も進まないことになりかね」ず、そのようなことは「大垣警察署としても回避したい行為」である」などと述べていた。その後、岐阜県警が、風力発電事業者に対し、反対運動を担う市民運動家が法律事務所に相談に行ったなどの情報を提供した事実まで判決で認定されており、市民運動家の動静を調査していたことがわかっている。この判決は、公権力が、本人の知らないまま、特定の個人に関する個人情報を、多数収集してこれらを集積し、分析し、保有するなどすれば、当該個人の実際の人間像(人物像)とは異なる人間像がその中で形成され、これが独り歩きして、部分的情報によって、当該個人に関する虚像が形成され、そのような予断に基づく意思決定がされる恐れがある。誤った個人情報に基づいて誤認逮捕などが起こりうるとしている。この判決は、今後の国会審議において、しっかりと参照すべきである。
自衛隊情報保全隊についても、仙台高裁平成28年2月2日判決(判例時報2293号18頁)が、市民による「医療費負担増の凍結・見直し」、「04国民春闘」、「年金改案反対」、「原水爆禁止の会」、「右翼による北方領土の日の集会への参加の呼びかけ」、「年金改悪反対」、「消費税増税反対」に関する各街宣活動等や、「小林多喜二展」、「核兵器廃絶を求める署名活動」に関する情報収集を行っていたことを認定し、プライバシー侵害があったと認定している。
5、ツワネ原則も求めていた情報機関に対する独立第三者機関による監視こそが求められている
70か国以上の500人を超える専門家との協議を経て、22の組織と学術センターによって作成された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則。南アフリカツワネにて最終採択(2013年6月12日発表))は、原則31において、「安全保障部門の諸機関について、その運用、規則、政策、財政、業務管理を含めて監視するための監視組織を未設置の国は、それを設置すべきである。この監視組織は、制度的にも、運用上も、また財政的にも監視対象の機関から独立しているべきである。」と定め、情報機関に対する独立した監視組織の設置を求めている。例えば、ドイツの連邦データ保護コミッショナーは、独自の人事権、予算を持ちつつ、憲法擁護庁、軍事諜報局、連邦情報局という安全保障部門の運用(テロ対策データベース等)等をチェックしている。
このような、第三者機関の設立の提案もないままに、国家情報局を設置しようとする国家情報局法案の国会提案は論外であり、我々は、その制定に強く反対する。 |
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| 経済安保法に異議ありキャンペーン/秘密保護法対策弁護団/「秘密保護法」廃止へ!実行委員会/改憲問題対策法律家六団体連絡会/憲法9条壊すな!実行委員会/肉球新党/日本マスコミ文化情報労組会議(MIC) |
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