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文部科学省による同志社国際高校に対する教育基本法第14条第2項に
違反する旨の認定に抗議し、指導通知を撤回することを求める決議
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1 転覆事故と文部科学省による指導通知
2026年3月16日、同志社国際高校の沖縄研修旅行において発生した転覆事故により、乗船していた同校の生徒と船長の2名の尊い命が失われた。事故は非常に痛ましいものであり、当部会は、亡くなられた2名の方のご冥福を心からお祈りするとともに、ご遺族の皆様に深い哀悼の意を表する。学校教育の過程、とりわけ、学校外の活動においては、万全の安全対策が取られるべきであることは言うまでもないことである。本件は、既に安全対策が不十分であったことは明らかになっており、再発防止策の徹底が行われなければならない。
一方、この事故に関して、文部科学省は、2026年(令和8年)5月22日、同志社国際高校の名護市辺野古の在日米軍新基地建設工事に関する学習が、政治的活動を禁じる教育基本法第14条第2項に違反すると認定し、学校法人同志社に対し指導通知を発した。
本件において、真相究明と安全確保及び再発防止策の徹底がなされる必要があることは上記のとおりであるが、安全管理面での指導と、教育内容に対する指導とはあくまでも別の問題であり、安全管理上の指導の必要性が高いからといって、学校法人同志社に対する教育内容に対する指導が正当化されるわけではない。
2 同志社国際高校の研修教育は教育基本法に違反するものではない
(1) 日本は、選挙で選ばれた議員が議会で法令・条例や予算など政治について議論し、決定するという間接民主主義をとっている。日本に生きる市民一人一人が、政治に参加するための素養を身に付け、参政権や請願権などの行使、世論の形成などを通じて民主政に参加することが望まれる。今日の社会では、政治的課題の解決に向けて、民主政治に関わっていく「民主政の担い手」の養成が期待されている。
(2) そして、学校教育の役割は、日本国憲法の下において民主主義を尊重し、未来の民主政の担い手を育てることにある。そのため、教育基本法(以下、「法」という)は、第1条で「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」を目的としている。また、法第14条第1項は「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」と定めている。
未来の民主政の担い手として必要な資質を養うことを目標とする学校教育の役割に鑑みれば、具体的な政治的課題に直面したときに、自らの頭で考え、権利行使をすることのできる素養を養うことは、当然要請されていることである。このような要請に基づき、学校教育の場では、これまでも、生徒の政治的教養を育む教育が行われてきた。
これらの法第1条の目的規定や、法第14条第1項の要請に鑑みれば、同条第2項の「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」との規定については、法第1条及び第14条第1項が実現しようとする主体的な人格としての成長を妨げることを防止するために設けられたと解釈するべきである。すなわち、同条同項は、教育の現場において、特定の政党を支持・反対することを目的として、生徒が主体的に考え判断することを妨げるような内容の政治教育や政治的活動を禁じるものと解されるべきであり、具体的な政治的諸課題を取り扱うことそのものを禁じるものと解されるべきではない。
一方、法第14条第2項の「政治的活動」について、行政解釈は「その行為の目的が政治的意義を持ち、その効果が政治に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為をいい、特定の政党との関係の有無にかかわらない」とする。しかし、「政治的活動」をこのように解釈すると、政治に関する学習の多くがこれに該当することになり、法第14条2項違反として認定を受けることとなりかねない。その結果、教師及び学校の教育内容の決定に萎縮効果をもたらすこととなり、学校教育の役割である「未来の民主政の担い手」の育成を阻害する結果となるから、かかる行政解釈は妥当ではない。
(3) 同志社国際高校による研修旅行は、同校の平和教育・人権教育の一環として、高校2年生が毎年3月に実施しているものであり、数カ月も前から事前学習を行い、研修旅行後も、事後学習を行い、学習結果を冊子にして発表するものとされている。研修旅行の行き先は毎年沖縄ということであるが、沖縄は日本において唯一の地上戦となった地であり、戦後は多くの米軍基地が存在していることによる住民への被害が多数発生している地である。そのような土地を訪問し、米軍基地の建設現場を見学し、現地の人間の話を聞くことは、平和で民主的な社会の担い手としての素養を醸成するために非常に有益であり、そこには特定の政党を支持・反対する目的はない。実際に研修で行われたプログラムにも、辺野古基地建設反対活動に使用されている船に乗るプログラムがあったが、実際の抗議行動に参加させることを目的としていたわけでも、実際に参加させたわけでない。また、学生に対して新基地建設への反対の意見を強制したわけでもない。
(4) したがって、同志社国際高校の研修旅行のプログラムは、特定の政党を支持・反対することを目的とする政治的活動には該当せず、法第14条第2項に違反するものではない。
3 文部科学省の指導通知こそが教育基本法に違反するものである
学校教育における教育内容を決定する権利、いわゆる教育権は、憲法第23条が学問の自由を保障していることに鑑みれば、まず第一には実際に子どもに教育を施す保護者や、現場の教師が有するのが妥当であり、国家による介入は可能な限り謙抑的であるべきである。旭川学力テスト最高裁判決(最判昭和51年5月21日)も、「本来人間の内面的価値に関する文化的な営みとして、党派的な政治的観念や利害によつて支配されるべきでない教育にそのような政治的影響が深く入り込む危険があることを考えるときは、教育内容に対する右のごとき国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される」し、「子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤つた知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法二六条、一三条の規定上からも許されないと解することができる」として、国家の教育内容に対する介入は、抑制的であることを求めている。
今回の文部科学省の学校法人同志社に対する教育基本法第14条第2項違反の認定およびそれに基づく指導通知は、前述のとおり、辺野古基地建設にかかわる学習を「政治的活動」であると決めつけてその取りやめを求めるものであって、同志社国際高校の教育権を侵害し平和学習を萎縮させるものであり、法第16条において禁止される「不当な支配」に該当する。
4 結論
当部会は、文部科学省に対し、教育内容に対する不当な介入をしたことに抗議し、速やかに学校法人同志社への指導通知を撤回することを求める。
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| 2026年6月28日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 8 回 定 時 総 会 |
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