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戦後80年を迎える年にあたり、日本国憲法の理念に反する政治からの
抜本的な転換を求める決議 |
1 2025年1月24日から6月22日まで開かれた第217回通常国会は、31年ぶりに少数与党の下で行われた。
しかし、今国会では、政府与党が2024年10月の衆議院議員総選挙で示された国民の政治不信に真摯に向き合うことはなく、また、日本維新の会や国民民主党などの一部野党による政権のアシストも行われた。そのため、今国会では日本国憲法の理念に反する自公政権の政策からの抜本的な転換は実現しなかった。
2 少数与党であったにもかかわらず、今国会では軍拡予算や複数の悪法が成立してしまった。
2025年度予算は、高額療養費の負担上限引き上げについては修正されたものの、物価高騰の下でも社会保障関係費が抑制される一方で、軍事費は前年度比9.4%増となる軍事優先の内容で成立してしまった。
例えば、5月16日に可決成立した「能動的サイバー防御法」は、通信の秘密(憲法21条)やプライバシー権(憲法13条)を侵害するおそれがある。同法は2022年12月の安保関連三文書改定に基づく軍拡政策の一環であり、憲法9条の平和主義の理念にも反している。
また、同じく5月16日に可決成立した「刑事IT化法」には、電磁的記録提供命令制度の創設といった、令状主義(憲法33条)やプライバシー権の保障(憲法13条)の観点から問題がある内容が含まれている。
そして、6月11日に可決成立した「日本学術会議法」は、政府から独立している現在の日本学術会議を廃止し、新たな特殊法人を設立するものであるが、人事や運営についての独立性や自律性が侵害されるおそれが極めて強いものとなっており、学問の自由(憲法23条)で保障された研究者集団の自律性を脅かすものである。同法は、2022年10月に行われた日本学術会議会員候補者の任命拒否という内閣総理大臣による違法行為を事実上正当化する暴挙でもある。
ただ、複数の悪法が可決成立する中で、憲法改正に向けた動きについては歯止めをかけることができた。衆議院における改憲勢力の議席数が3分の2を下回った結果、憲法審査会が与党ペースで進むことがなくなり、改憲5会派(自民、公明、国民、維新、有志の会)が議員任期延長の改憲骨子案をパフォーマンス的に作成したものの、発議に至る見通しは立っていない状況である。
3 一方、憲法の理念に沿った法案については、今国会で成立させることができなかった。
当部会が2025年3月15日第4回常任委員会決議で実現を求めた選択的夫婦別姓制度は、野党から法案が提出されて審議されたものの、与党の抵抗や国民、維新のスタンドプレーの結果、衆議院での採決に至らなかった。
また、当部会が2025年3月26日付け議長声明で抜本改正を求めた政治資金規正法については、企業団体献金を禁止する改正案が提出されたものの、自民党が企業団体献金の存続に固執し、採決が見送られた。
そして、再審法については、超党派議連が法案を作成したものの、与党と維新が加わらない形での法案提出となり、継続審議となった他、空襲被害者救済法案については、自民党の党内手続が進まなかった結果、今国会での提出が見送られた。
4 今国会は総じて、明文改憲の動きは弱まったものの、憲法が保障する基本的人権を脅かし、日本の軍事化を進める政治の動きが進行してしまう内容であった。
青年法律家協会は、1954年に「再軍備が課題となり、これと関連して思想、言論、集会、結社の自由や団体行動の自由がふたたび否定しさられようとしてい」る状況に抗するために設立された。
当部会はこの設立の精神に則って、今国会で成立した悪法の廃止を求めるとともに、前述した憲法の理念を具体化する法案の早期実現を求める。
そして、戦後80年を迎える年にあたり、日本国憲法の理念に反する政治から抜本的に転換し、憲法が定める基本的人権、民主主義、平和主義を発展強化していくために全力で活動することを、ここに宣言する。 |
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2025年6月29日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 5 6 回 定 時 総 会 |
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