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陸上自衛隊による市民の思想調査、情報収集に強く抗議するとともに、
さらなる国民監視の拡大に強く反対する決議 |
1 陸上自衛隊「現地情報隊」による違法な市民監視と思想調査
熊本日日新聞の報道により、陸上自衛隊の中央情報隊に属する対外情報部門「現地情報隊」が、日本人の大学教授やNPO法人代表ら民間人を対象に、組織的な情報収集活動を行っていたことが発覚した。報道によれば、対象者の顔写真や経歴のみならず、「愛国心」や「対自衛隊感情」といった思想信条、さらには「異性関係」や「性的嗜好」など極めて私的な情報までもが「個人BSD(ベーシックソースデータ)報告書」としてまとめられ、少なくとも数千人分が保管されていたとされる。また、国内で明確な法的根拠なく、身分を秘匿して民間人に接近し、本人の同意なく個人情報を収集していたことが強く伺われる。さらに、これらの活動が文民である防衛相には知らされていなかったとされている。
2 憲法違反および個人情報保護法等の法令違反であること
思想良心や性的嗜好といった極めてセンシティブな個人情報を、本人の同意なく、また、収集の目的を明らかにせずに収集し、保管する行為は、私的な事柄に関する事項をみだりに第三者に取得、開示または公表されないプライバシー権、自己の情報を自ら管理する自己情報コントロール権(憲法13条)の重大な侵害である。愛国心や自衛隊に対する感情という思想良心にわたる情報の収集は、憲法19条が保障する思想及び良心の自由を侵害するものである。
また、次の点でも違法の疑いが強い。
そもそも、プライバシー性の強い情報を収集するのは、個人の権利利益を侵害する度合いが大きく、行政機関は法的根拠なく行うことができないと解するべきところ(法律の留保)、本件では現地情報隊の活動を根拠づける法律が存在しない。
また、身分を隠して情報を収集したことは、「偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない」と定める個人情報保護法第64条、情報収集時に利用目的を明示していないことは、情報取得時に利用目的を明示することを定める同法62条、性的嗜好、体形などセンシティブな個人情報を収集保管したことは、利用目的の達成に必要な範囲を超えた情報保有を禁じる同法61条、公文書として管理していなかったことは、保有個人情報の安全管理に必要、適切な措置を講ずることを定める同法66条にそれぞれ違反する可能性が高い。
公文書として管理、整理をしていないことは、行政文書の作成義務を定める公文書管理法第4条、行政文書の保存期間の設定やファイル管理簿の作成公表義務を定める同法5条、7条に違反する可能性が高い。
自衛隊による市民監視を巡っては、2016年、仙台高裁が自衛隊の情報保全隊の情報収集活動に関し、「何人も個人の私的な事柄に関する情報をみだりに第三者に取得、開示又は公表されない自由を有し、これはプライバシーに係る情報として法的保護に値する。(中略)情報の収集については、(収集の)必要性が認められても、その必要性の程度も考慮の上で、その収集態様等によっては違法性を有する場合があり得る」としたうえで、一部の原告に対する情報収集を違法であったと判断している。
現地情報隊が情報収集活動を行っていたことは、仙台高裁判決を受けても自衛隊は反省せず、漫然と市民の情報収集、監視を継続していたことを示し、その遵法精神のなさが如実に表れている。
3 自民党の政策提言の危険性
こうした中、与党である自民党は2026年8月5日、「我が国の『情報防衛力』の強化に向けて」とする提言をまとめ、「防諜」「安全保障」の名のもとに、行政にさらなる情報収集能力、機能を持たせようとしている。
現地情報隊の活動を見ても明らかなように、行政機関の情報収集能力の拡大は、市民監視の拡大、市民のプライバシー権への侵害を伴うのであり、制度改変を行う前に、現地情報隊の活動実態を詳らかにし、市民の権利侵害の内容、程度を精査することが不可欠である。
4 思想調査の即時中止と監視社会化への反対
当部会は、現地情報隊が市民のプライバシーにわたる情報を収集していたことに強く抗議するとともに、日本政府に対し、市民監視の実態を隠蔽せず、陸上自衛隊による思想調査の全容を速やかに解明・公表し、直ちにこうした活動を中止すること、自衛隊を含むあらゆる行政機関の活動において、市民のプライバシー権、思想良心の自由をはじめとした基本的人権を尊重することを、改めて強く求める。また、基本的人権を抑圧し国民監視を合法化することにつながりかねない自民党のインテリジェンス強化の政策に反対する。
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| 2026年9月5日 |
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 2 回 常 任 委 員 会
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