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米国政府による国際刑事裁判所(ICC)所長らに対する制裁措置に
抗議し撤回を求める決議
 2026年8月18日、米国政府は、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長およびアブドゥライエ・セエ上級裁判弁護士に対し、ICCの管轄権に同意していない政府の当局者を訴追する取組に関与したことを理由として、資産凍結、渡航禁止、米国企業からのサービス利用制限等を含む制裁措置を科すことを発表した。この措置は、昨年2月6日にトランプ大統領が署名した大統領令に基づきなされてきたICC裁判官らに対する制裁措置に続くものである。

 ICCは国際刑事裁判所ローマ規程に基づき2002年7月に設立された常設の国際刑事司法機関である。ICCは加盟国におけるジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪を訴追する国際的な管轄権を有し、戦争犯罪等について「個人」を訴追・処罰することで、将来において同様の犯罪が繰り返されることを防止することを目的とした機関である。

 実際に、ICCは、2023年3月にはウクライナ戦争において戦争犯罪容疑でプーチン大統領らに対して逮捕状を発付し、2024 年11月にはガザ侵攻において戦争犯罪および人道に対する罪の容疑でイスラエルのネタニヤフ首相らに対して逮捕状を発付するなど、戦争犯罪の責任者に対して国際法に基づく必要な措置をとることにより、国際法秩序のために重要な役割を担っている。

 米国政府による一連のICC関係者に対する制裁措置は、このような国際法秩序の維持を担うICCに対する不当な政治的圧力であり、国際法秩序そのものへの攻撃にほかならない。大国が自国の利害や思惑によって法を無視し、司法機関の機能を麻痺させ法の支配を破壊する行為は断じて許されない。

 日本はローマ規程の締約国であり、ICCに対する最大の分担金拠出国でもある。日本国憲法前文は、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。」と国際協調主義と平和主義の堅持を宣言している。日本政府は、かかる憲法前文を踏まえ、国際法の危機をもたらしている大国の動きに正面から対峙し、ICCの独立性を擁護し、職員の安全と職務遂行を保護する積極的な役割を果たす義務がある。

 当部会は、米国政府に対し、国際法秩序と法の支配を公然と踏みにじる暴挙に対して強く抗議するとともに、ICC関係者への制裁措置の即時かつ無条件の撤回を求める。

 また、日本政府に対し、ICCおよび赤根所長らに対する断固たる支持と関係者の具体的保護・支援の行動を示すとともに、米国政府に対して制裁の即時撤回を強く働きかけ、法の支配に基づく国際秩序の維持に向けて諸外国と密接に連携することを求める。
2026年9月5日
青年法律家協会弁護士学者合同部会
第 2 回 常 任 委 員 会
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